木造復権というが?

木造計画・設計基準
法律は去年からあった気がしますが、やっとこさ本で出ました。
ざっと見た感じ、JASの規格をちゃんと使いましょう、という以外はあんまり変なことは書いてなさそうです。構造計画例で、平面的混構造に触れてあったのにびっくり。RCコア+ピン柱+外周に木造耐力壁。一見成立してそうな気がしますが、木造耐力壁の剛性がRCに比べて低いから、100%RC壁が負担することになるぞ。たぶん、床の面内せん断力での伝達が結構苦しくなりそう。そして、木からRCへの応力伝達で破綻しそう。
ハイブリッド構造というと聞こえはよろしいですが、個人的な感覚では、木とRCやSは相性がよろしくないです。Sが強すぎるのと、木が弱すぎるの併せ業で、接合部で破綻します。はしあきを取って切り裂きに対して設計しようとすると、木の断面が相当大きくないと非常に苦しいです。思った以上にゴツイ接合部になっちゃいます。ので、たま〜にSで補強するときはビスでいっぱい留めてお茶を濁していますが・・・・。
木には木でいいところもあるし、使いにくい場所もあるので、無理に木で!とか決めないほうが良いと思うけどなぁ。
設計例で気になったのが、基礎梁の無謀な大きさと、1階金物の異常な大きさ。HD50って、あんた・・・・。ホンマかいな。2階建てで引き抜きが5tって、異常だと思います。
壁量計算と許容応力度設計で、両方を成立させるためにいろいろと変な設計体系になっていますが、この際許容応力度設計体系として、壁倍率と床倍率にはバイバイしてほしいです。せん断剛性と許容応力度を定めた上で、SやRC同等としたほうが扱いやすいです。現行の木造の許容応力度設計はやっぱりインチキくさいと思う。規模が住宅レベルをお相手にしているので、その程度でいいのですが、公共建築となればもうちょいましな設計体系もあるだろに。その場合は、剛床工法前提としてください・・・。
というわけで、ちょっと先走った設計基準だと思います。あと数年は使い物にならなさそう。
納まり例で、床の遮音性能を確保するためにALCで床を作る方法なんかも紹介されていたり。木造なんだから、遮音はあきらめようよ。遮音性能が必要ならRCにしようよ。


シアリングを用いた杉集成材と鋼板によるハイブリッド部材に関する研究 : その3.シアリング接合部要素実験
前述の、Sと木の接合部ジレンマのひとつの解決策。考案者にお話を聞いたことがありますが、よく出来てますね〜。賢い。
実現していますが、申請上は何造なんですか?→むにゃむにゃ造ですぅ〜。
ですよねー。


東京都耐震ポータルサイト
緊急輸送道路沿いの補強にドカンと補助金。内需拡大っすなぁ〜。いいことです。
大きいところビルは当然ですが、うちの事務所が入居している弱小テナントにも金くれ。完全に対象外ですが、つぶせないし補強も出来ない雑居ビルが無数にあります。ようは、仕事も無数にあるわけで1次診断上等!でやってしまうレベルだったら、20万程度の補助金がつけば診断はやってくれるんじゃないかな。問題は、診断したらなぜかお客さんは安心してしまう正常化バイアスにあるような気がしますが。報告書では、『倒壊の危険性が高い』とちゃんと書いてあるんだけどなぁ〜。この辺の上手い交渉術がほしいです。
とか言っている、弊社の入居ビルは東京オリンピックと同じ年に竣工。コレで満室なのがすごいわ。診断してどうだったかというと・・・・、S造の癖にダイヤフラムがない。床はスパンクリート置いてあるだけで水平ブレースがない。耐震性云々以前に、成立してません。ちゃんちゃん。