ピタゴラスの定理

建築家に限らず若い人(40前後以下)とお仕事していて思うのですが、毎度毎度同じようなところで一喜一憂しています。キッチンダクトが納まりませんとか、スリーブ納まりませんとか。素人じゃないんだから、基本設計段階でボンヤリとでも方針を決めておかないのですかね?よく分からん。毎回同じようなところで徹夜して、クオリティを下げていては駄目なんじゃないの?
個人的にはこういう、初歩的なことをひたすらクソまじめにやって時間を無駄にすることを『ピタゴラスの定理を証明する』と呼んでいます。まぁね、年に1回位は初心を思い出すのにいいけどさ。毎回やってて飽きないのかね?
打ち合わせの段階で、私は比較的早め早めに検討事項を列挙して、なるべく後段階での選択肢を狭める方向に持っていくようにしています。熱力学の第二法則によると、エントロピは増大する方向にあり、プロジェクトが発散していくことは物理法則的に止めることはできません。人間に可能なのは、最初の段階をある程度はっきりと絞ることで、発散による後工程での火傷を小さくすることだけです。ただし、この方法は最初の勘所を決めるのに非常にストレスがかかります。
こうして先読みすることは、相手が不快になることが多いみたいです。『知識を見せびらかしている!』と非難されることが多いですね。非常識は歓迎ですが、無常識は困るよなぁ。

最近ようやく納得したのは、私の構造設計の勘所が、世間で言うところの『構造設計』とはとてつもなくかけ離れていることですね。建築家は『地震でもつ?もたない?』ということを聞きたいようなのですが、私に言わせればこの人たちのやる小ぶりな物件は『現実的に品質を高く作れるか?』がキモです。地震でどうたらこうたら言っていいのは、60m超えてからか応答解析するやつだな。
雑誌には、ダイヤフラムの納まりを無視した鉄骨とか、到底まともに溶接できないようなディテールが自慢げに掲載されています。私は、そういう構造力学しか考えていないものは『ブードゥー構造』と大いに馬鹿にしています。


MIDAS/iGenでできそうな鉄骨物件がようやく来たので、設計中。まぁ、バグがあるよね。いろいろと気に入らないところがありますが、SEINのゴミ仕様に比べればいろいろとスタディできて便利。柱の座屈長さの自動計算とか、明らかにバグがありますけど自分で入力できるからまぁいいか。たぶん、ピン接合とか回転剛性を入力すると、変なフラグが立つのでしょう。
この手の構造設計用ソフトを作ろうとすると、
・構造設計の豊富な経験があること(当然ですが)
・コンピュータアルゴリズムの造詣が深いこと(バグの匂いを感じ取れる)
・各種構造設計基準に強いこと(実務とはちょっと違う世界)
・法律に強いこと(これまた力学や計算とは別の世界)
の4つの分野で突出した能力があることだと思います。
が、こんな人いねーわな。いたとしても、みんなジイサンで老眼だわw


【画像】そんな寝方はどうかと思う、猫の寝相がちょっと酷い写真16枚
こいつら、どんなところでも寝るな。