問題は耐力なのか剛性なのか


みんな大好き構造スリットの話です。
そもそもは十勝沖地震の時に、小学校などの腰壁垂れ壁が柱に取り付いている構造の場合、期待された曲げ変形になる前に、極短柱の性状を示して脆性破壊をするのでよろしくないという知見からスタートした話だと理解しています。つまりは、柱の変形性能を確保し、脆性破壊を防止する観点から構造スリットの使用が推奨されたわけで、純然たる柱耐力の改善に他なりません。
翻って現在。何でもかんでも馬鹿の一つ覚えのように構造スリットです。いわく、『壁が取り付くことによる剛性の影響を排除するため』みたいです。ばかばかしい。現在、構造スリットを剛性の問題ではなく耐力の問題として捉えている人は、ほとんど見たことがありません。ほとんど全員が口をそろえて剛性の問題とおっしゃっています。私も設計を始めた当初はそう考えていましたが、それなりに自分で勉強したり調べたりした結果、それは違うのではないかと思っています。
とか言うことを言うと、危険断面位置がどーのこーのとか反論されますが、普通の中高層レベルで危険断面位置の変化によって建物全体の健全性に影響があるとはとても思えません。むしろ、こんなくだらない剛性の話に固執することで、他の設計がおろそかになるほうがよほど問題だと思います。柱の袖壁なんて、ほっといてもいいんじゃないの?
腰壁の取り付き方で、致命的になるのはやはり先ほど上げた小学校とか、バルコニーを有しないタイプのRCオフィスの系統でしょうか。建築計画的に、これ以外で極短柱が問題になるような計画はあまりなさそうなので、マンションなどで妻壁にスリットを切っているのは愚かだな〜と思います。ま、個人的にはこんなくだらない内容で確認審査が滞るのはばかばかしいので、何も考えずにスリットを入れますけど。この辺の議論を建築学会でやってほしいところではありますが、彼らは重度の観念論者なので、『スリットを入れることで非構造壁の損傷が減ります!』とか寝言を言うんだろうな〜。


耐震壁の取り扱いについても。『開口周比が0.4より大きいから耐力壁にならない』という話が広がっていますが、これも誤解です。RC規準には『開口周比が0.4を上回る場合には、ラーメンとして解いたほうが実際の挙動に近い』と書いてあるだけで、耐震壁にならないとは一言も書いてありません。
物事を深く考えなくなっているのは、世の中の流れなので私はあきらめていますが、こんなにも次々に過去の知見を捨て去って本当に良いのかは疑問ですね。
これもまた、こういう発言をすると『お前は構造をわかっていない!』扱いされるので、日ごろは黙ってますけど。



嫁到着。
セイバーさん7人目\(^o^)/