適用の限界


おぱんつ見えた!
ではなくて。
このモデルのスカートと耳と髪の毛は物理演算により計算しています。おそらくですが、特定の自由度の骨を頭や腕の動きに連動させることにより、運動方程式を解くことでふわふわスカートを実現しています。手足の動きは、時刻歴で入力していると思うので、その動きに伴い、加速度が生じることでその力が仮想の骨に伝達するという考え方かと思います。
基本的に、この動画のようなスカートの動き程度では形状の破綻は起きませんが、完全にスカートをめくるような皺が必要でかつ大変形となるような動きには対応していないでしょう。
計算モデルとしては、5分程度のダンスに特化しており、物理演算を用いているものの決して現実を模した計算モデルではないということです。初期位置のスカート形状からして、現実で言うと重力に引っ張られることであんなに膨らんだ形状にはなりません。実際に作るには、特殊な合金を用いた骨か、静電気などで形状を保つ必要があるでしょう。
ついでに言うと、この手の物理演算系のソルバーは基本的には剛体をお相手にしています。本当は弾性変形を行うのですが、それを取り扱うにはきわめてクソ面倒な計算が必要なのでオミットしているでしょう。
と、かくも解析モデルというのは融通の利かない、頭の固い困ったやつなのです。


翻って、建物の構造解析に用いているモデルたち。これまた、全く融通の利かない大変不便で頭の固い梁要素がメインです。変形や応力の公式に当てはめるのが構造のモデル化だと思われていますが、とんでもない!
その前提条件として、平面保持の過程が成立して、そこそこスレンダーなプロポーションで曲げ変形が卓越して、弾性波の伝達を考えなくて良い程度に短くて、かつちょっとしか変形しない…等々の多数の前提条件を乗り越えた勇者が、ようやく梁要素としてデビューして公式に当てはめて計算できるわけです。まさに重武装の鎧のような仮定に守られた要素です。極めて深い専門知識がなければ使えません。
で、こいつらを重ね合わせて計算する現行の変位法ベースのFEM。これがまた融通が利かない。空気読まない。節点しか外力かけられませんて・・・・。分布荷重どないすんねん。いちいち等価節点外力に変換ですか。たいへん面倒です。


この手の解析について、世の中の大多数の人は『自然現象のシミュレーションを行っている』と思っているようです。間違いではないのですが、正確には『いろいろと都合の悪いことは無視して、それっぽい計算結果が出るようにモデルを調整している』というのが真実の姿です。正確なモデル化とかいう変な日本語が氾濫していますが、モデル化とはそもそも実際にある重要ではない自由度や因子を殺しながら、取扱いやすいように簡単にしている行為であって、自然現象の正確なシミュレーションはお相手にしていません。
この辺の適用の限界を知っているかいないかは、大きな違いかと思います。板要素でモデル化すれば、正確な応力がわかるとかいうおたんちんがいますが、大きな間違いですね。あれも厳密には、非適合要素なので、お隣の要素とある因子についてはつながってませんw