比較的妥当な判断

つり天井:公立校で撤去 8700棟、地震対策−−文科省方針
素性の知れんモノで、重量物で面積が大きい箇所で、撤去しても影響なさそうなところは撤去しましょうという発想。現段階では、妥当な判断かと思います。
ただ。

 文科省は現在、天井の形状、補強部材の有無など建築士らが簡単な目視で耐震性があるかを判断できる点検マニュアルを作成中で「完全な安全」が確認できなければ、撤去を求める。

「完全な安全」って何ですかね。応答解析したところで完全な安全なんて、誰も保障できませんが。目視で点検できるマニュアルをもってして完全な安全とはこれまたいかに。そして管轄が文科省なので、こういう意味の分からん措置になるんでしょう。
ちなみに、天井が大面積にわたって崩落するメカニズムはよくわかっていないはずです。振動実験をやった人に聞きましたが、どんだけ過激にゆすってもなかなか落ちないそうです。やはり数百平米の大面積になった時に初めて起きる何らかの事象がカギになっているのでしょう。個人的には、パネルの継ぎ目がピン状態になっている大きな平板の座屈モードが発生して、その強制変形に伴って吊りボルトの取り付け部が負けるのかなと思います。が、普通に考えてそんなバカでかい力が発生するようには思えないので、力学的にすっきりしませんな。仙台駅のホームとかは、この理屈で説明できそうな気がしますが、誰か研究してますかね?

天井の話は、建築家からもたまに出ます。そのたびに私が言うのは、
・こんなカスみたいな野縁と手で曲がるようなへなちょこ接合部で、大きく揺らされたときにもつと思いますか?
・仮に天井が落下してきたとして、どれくらいの大きさと落下距離だと623+Pの昇龍拳で迎撃できると思いますか?
の2点です。
どいつもこいつも想像力がなくて、『計算すれば問題ない教』にかかっている馬鹿どもが多くて困りますわ。ホンマに。計算ではなくて、想像力の問題です。
この手の話はぜーんぶ構造屋にもっていっていますが、なーんも考えてない建築家にも馬鹿なりに考えさせるべきで、JSCAもそう動いてほしいものです。これは、構造設計はアドバイスをしますが、建築設計者が責任をもって考えるべき問題です。学会のセッションで、天井の講演を聞きに来ている設計者は何人いますか?今のように、構造の連中が面倒を見ているようでは話になりませんな。『数学や力学が苦手なので考えることができない』とか寝言をほざいている建築家は、さっさと設計業界からたたき出すべきでしょう。問題は数学や力学ではないのです。
ということをもっと理解して欲しいものです。とほほ。

ちなみに、天井天井騒いでいますが、床ごとぺしゃんこになるほど耐震性の低い庁舎やマンションはゴロゴロしてます。とりあえず、そっち先だろと思いますわ。最近の統計を見ていませんが、数年前で日本における耐震化率(新耐震以後)は80%程度でした。木造はよくわかりませんけど。この数値を見て、高いとみるか低いとみるかは個人の自由ですが、周囲の建物を見まわした時に20%の建物が、大地震の時に倒壊する可能性が高く、人が死ぬ可能性があるということです。