新国立競技場で思うこと

どうやら意識高い系の建築家さまの間では、新国立競技場についてワイワイ騒ぐことと安藤忠雄をこき下ろすことが最近のファッションのようです。
みなさん、web上で大騒ぎしているみたいですが何なんですかね。暇なんですかね。

これが公募?あきれてしまう新国立競技場デザイン応募資格まとめ - NAVER まとめ
詳細な要綱を取り寄せて読んだわけではないのですが、

① 次のいずれかの国際的な建築賞の受賞経験を有する者
1) 高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門
2) プリツカー賞
3) RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル
4) AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル
5) UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル
② 収容定員 1.5 万人以上のスタジアム(ラグビー、サッカー又は陸上競技等)の基本設計又は実施設計の実績を有する者

①を見て騒いでいるようなのですが、問題は②です。私はスタジアムの設計をしたことがないので知りませんでしたが、1.5万人収容のスタジアムはそこらじゅうにあります。
陸上競技場 - Wikipedia
日本のサッカー競技場一覧 - Wikipedia
これってさ、誰も気が付いてないけど、役所の施設整備課で設計したものだと整備課長クラスだと応募できたんだよね。中堅組織設計くらいまでは普通に経験可能な規模になります。ついでにいうと、基本設計or実施でいいのでさらにゆるい。多分、知り合いか知りあいの知りあいで普通にいるレベル。
閉鎖的だと言われていますが、②の資格要件があまりにゆるいのです。しかも世界中の設計事務所相手に1.5万人だと、むしろオープンすぎると思います。せめて3万人以上の実績にしてほしかったよ。
安藤忠雄氏はよくぞこれほどのオープンなコンペをやったなぁ。

新国立競技場の基本設計は出来上がっていない!②|建築エコノミスト 森山のブログ
C種膜を使用することに対して、鬼の首を取ったように大喜びされています。
普通にCルートで設計すれば良いですし、特に問題はありません。大臣認定を取得するだろうから、指定建築材料とかも基本的には外れます。
所定の性能を発揮して設計クライテリアを満足すればよいのですから。この人の論点からすると、耐火Cルートの無耐火被覆は全部だめということになっちゃいますね。

新国立競技場の基本設計は出来上がっていない!⑥|建築エコノミスト 森山のブログ
これもひどい言いがかりです。橋梁アーチとの類似で云々と過去に書いておられましたが、スラストを処理する方法なんていくらでもあります。

アラップが、もうやめとけって言ってるのに、
日本側でつじつま合わせたのが現在の基本設計の構造案なんです。

はい出ました。文化人お得意のジャパンディスカウント。私に言わせれば、ゼネコンの実施設計の連中のトップガンを連れてきてアラップが下りればなんぼでもできまっせ?

東京芸大名誉教授の元倉眞琴さんから安藤忠雄氏への手紙 | 森山高至
そして気分の悪くなるくだらないお手紙ときたもんだ。

貴方が独学で建築を学ぶなど人一倍の努力を重ね、これまで多くの優れた建築を創り出してきたことに対して、私は常に深い敬意を寄せてきました。

はっきりと、安藤忠雄は学がないのに口出しするなと読めますね。分かります。

どう考えてもこのプロジェクトはこれまで築き上げて来た貴方の思想、貴方の建築、そして貴方の神話(ストーリー)にそぐわないものです。

薄気味悪い神話を勝手に作って、人に押し付ける。そしてその妄想神話に対して失望したフリをする。いつもの安全神話やらと同じスキームです。
あまりにもくだらない。学のあるエリートに許される思想ではありません。唖然とするほかはなく、その陳腐で器の小さい人間性に失笑するばかりです。これを一生懸命シェアした方々は脳みそがないんでしょうか。

そして極め付け。
改修だとコスト半分、国立競技場の重大岐路 | 週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
伊東豊雄氏の改修ポンチ絵。これで700億でできますとかギャグでしょうか。あまりに手抜きのポンチ絵には笑うしかありません。

とまぁ、騒いでいる方々の技術的知見のなさ、国家プロジェクトに対するための国家観のなさ、歴史に対する無知加減を見ていると辟易します。あなた方は大学で専門教育を受けたのでしょう。なぜ、その知識を生かせないのか?

そうそう。みこしに祭り上げられた槇文彦氏。磯崎新氏にボロクソに言われた東京5大粗大ごみの東京国際フォーラムのコンペ審査委員長です。総工費1700億円なり。安藤忠雄を酷評する方たちは、こっちもよろしく。おんなじやん。

このから騒ぎで私に見えるのは、
・学のない安藤忠雄をどう扱っていいかわからない東大の方々
村野藤吾を事実上現代建築から抹殺した時代から何一つ進んでいないこと
・結局は関西を嫌う関東勢力
というあたりでしょうか。
私に言わせれば、都市ゲリラとか言っている危険人物の安藤忠雄を都市計画にかませるのはマズイと思います。さすがにゲリラはねーだろと。
そこで立つのは、、東大で勉強したエリートの方々なのですが、結局何のビジョンも出せません。出てきたのが伊東豊雄氏の脱力ポンチ絵。突き詰めると東大のエリートの情けなさなのです。
安藤忠雄氏は基本的に大阪のオッサンでゲリラのボクサーなんだけど、彼は西班牙万博で政府館をやっているし、東大の先生もやったしで、なんだかんだで"国家"なるものを考えたことがあるのです。一方の伊東豊雄氏は?東大に招聘されるも1回も学校に行かずに首になりました。そんな人が、なぜ"国立"競技場にモノ申しているのでしょうか?
奇しくも安藤忠雄氏、伊東豊雄氏ともに大昔に槇文彦氏に"平和な時代の野武士"と称されています。安藤忠雄は、一回野武士をやめて国家と付き合っています。伊東豊雄氏は?相も変わらず"平和な時代の野武士"を謳歌しています。国が豊かで何をやっても大丈夫なことに甘えたまま大人になったのはどちらでしょうか?いまだに失われた20年のデフレ経済に乗っかっているのはどっち?
現在署名とかやって喜んでいる子供大人たちこそが失われた20年を象徴するものであり、私のような若手は彼らを見習う必要は一切なく、彼らの屍を踏み越えていくようでなくてはならないでしょう。所詮思想の強度が低いので、この先は活動が先鋭化して内ゲバやって終わりでしょう。