シャーレン構造見てきました

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三軒茶屋中央劇場。1952年くらいに竣工。
屋根はトンネル系のRCシェルになります。
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変なリブがついていますが、裏から見ればちゃんとしたRCシェルの顔をしています。スパンが10m強でライズが大きいですね。
CiNii 論文 -  トンネル系シヤーレン屋根を有する映画館に就いて
上記論文参照。
コンクリートはFc21程度、W/C=55%でスランプ19cm、混和剤はAE減水剤を使用。水セメント比が小さ目なので悪くないコンクリートじゃないかな。
RCシェルの建物の実際が見れないなぁと思っていたのですが、思いのほか近所にありました。現在はこの映画館は閉鎖されて再開発待ち。多分、現存する中では一番古いシェルじゃないのかな。
ほぼ同時期の昭和26年に、京大の農学部自動車車庫をRCシェルで作ったらしいといううわさは聞いているのですが、さすがに見つからんね。今もあるかどうか知りませんが。

さて、設計者の加藤渉先生。この方は、戦時中に関東軍に協力してコンクリート船の開発に携わっていました。その時500tと5000tの船を設計して、実際に進水まで行ったとのこと。長さが130mあったそうなので、そりゃ建築のシェルくらい楽勝ですわ。ひっくり返せばいいだけだからね。
で、妙なリブがついている理由も納得。アメリカのコンクリート船は完全なシェル構造なんだけど、日本のはキールが入っているのが特徴のハズなんだよね。多分その名残だわ。
安浦のコンクリート船
http://www.arch.cst.nihon-u.ac.jp/koho/shunken/pdf/19970706.pdf
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/25/025-02-2324.pdf

建築への誘い―先駆者10人の歩んだ道 (1982年)

建築への誘い―先駆者10人の歩んだ道 (1982年)

上記書籍によれば、加藤渉氏に仕事を持っていったのは京大の横尾義貫氏と増田友也氏とのこと。横尾氏の来歴によれば、昭和14~17年まで佐世保海軍建築部に所属となっています。その時には針尾送信塔は完成していますし、その時期は真島健三郎の直弟子である吉田直が海軍建築局長を務めています。また、同時期の佐世保においては耐爆構造のシェルっぽいものも実現されていることから、かなりの技術蓄積があったものと推察されます。
と、シェルを遡ると簡単に軍事技術につながるもんですね。現代日本においては、この手の話題は戦争協力だとみなされてタブーになるようなのですが、技術の蓄積という点において誰かがきちんと総括する必要があるのではないかと思います。

というようなことは、きっと建築学会から出るという噂の誰得指針である鉄筋コンクリートシェル構造設計指針の序論に書かれるハズ。

余談。
日ごろ何気なく使っている異形鉄筋とその継手。この技術のベースは、第1次世界大戦後にアメリカがコンクリート船を作るために大量に研究しまくった結果だそうです。
どこかの学術論文で読んだのですが、思い出したら追記しておきます。