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今も昔も

建築学体系18 鉄骨鉄筋コンクリート構造(S38)序文より

(前略)
まず剛比の仮定・・・・。これは応力解析の最初に設計の最後の結果を要求するわけで、あまり経験のないものや、経験を積んだ技術者でも、何千本の部材をどうして最初から決めることができようか。途方に暮れた彼らは、先輩のデザイナーの言うようにまず断面寸法を決めるであろう。この位でどうだ、デザイナーは柱が小さく、梁などはむしろない方が良いのだから、彼らと相談して決めた部材で応力を出したとしたら、とんでもない断面が出来上がる。例えば55*55cmの柱に対して8-L、鉄筋は36-D28というような断面ができてしまう。鋼材が多すぎると文句を言われ、計算やり直しということになる。哀れにも彼らは再び、はじめからやり直さねばならない。かくのごとくにして、彼らは架空のラーメン計算に全エネルギを搾り取られてしまう。
したがって、鉄骨鉄筋コンクリート構造で最も重要であるところの部材断面の設計、柱・梁接合部の問題、基礎設計の問題などに対しては、極めてわずかの時間しか残っていない。それに設計変更は随時おこる。剛比を仮定して、やっと分布係数が決まったところに変更とくる。仕方がない計算書のつじつまを合わせるのに精いっぱいというのが実状ではないだろうか。もちろん数学の神様のような人もいるだろうが、そのような人は、土建屋と軽視されるこの世界にはあまり入ってこない。建築界にはむしろ数学に弱い人が集まってくる傾向が強い(もちろん例外もある)。したがって要領の良い人はともかく真面目で気が小さい彼らは、膨大なる計算を抱えて、毎日青い顔をしながらラーメン計算を行っている。最近はたてものの事故が多く、建設会社、設計事務所には賞罰規定すらできている。いったい罪は誰が受けるのだろうか。構造技術者に決まっているようなものだ。これらについてはいたるところで触れているが、著者は何とかもう少し緩和規定でも出してもらいたいと思っている。(建築構造技術者の連合を作って、スト権を与えてもらいたいとさえ思う。某建築会社で設計部の構造計算の担当者が3代続いて物故者を出した例があるのを見ても、いかに構造計算者が不当に苦しめられているかがわかるであろう)

どこかで聞いたような話である。50年前とかわっとらんがな。メンタル故障経歴の私が言うのもなんですが、某建設会社の構造設計も故障者多数でした。絶対に全部理解できない膨大な構造関係の専門書を満たしていないとNGなんて世の中ですから、さっさと馬鹿になって「分かりません」と言いたいものです。
書いてあることは真っ当すぎて泣けてきます。正義の味方のちょうちん持ちにすぎないJSCAの老人の方々の目ん玉ひんむいて読ませたいものである。


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うわ。写真ボケボケ。1965年くらい。
坂倉設計事務所の新赤坂ビル。なんか貧相ですね。
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構造はレーモンド事務所出身の岡本剛氏。別に5m跳ねだそうが何でもいいけど、9階建てでSRCじゃないんですね。規模が小さいからどうにでもなるけど、偏心コア気味で耐震診断したらNGだろうなぁ。
この手の建物の偏心率の考え方で、重心を計算する際に軸力分布による方法と、平面的な質量分布による方法がありますが、どっちを採用するか迷いますね。高さが20m以下ならどうでもいいかと思うのですが、ちょっと背が高いのでもうちょいマシな形にしないとまずそうです。あと、壁のスタンスが全然ないから転倒モーメントの処理が力技になるよね。寸法が何もないので分かりませんが、圧縮側の断面積が心もとない。
現在の建築基準法の中でもこの架構は実現可能でしょう。普通にルート3やればいいわけです。Fesの割増かけて、コンクリート強度を上げて柱筋は高強度の芯鉄筋をドカスカ入れたらどうにでもなるでしょう。HPシェル状の跳ねだしスラブもどうにでもできます。Ds0.4前提さ。
で、それが良い構造設計かと言われればそういうわけではなく。別に現行法規に照らさなくても、当時の基準から言ってもこの設計は決して良い設計ではないと思います。JSCAに代表される構造設計職能団体であれこれ提言していますが、あくまで構造の新奇性に特化しているため、世の中的に『良い構造設計をする』というインセンティブが一切ないのです。
十勝沖地震報告書(新耐震前)なんかだと、坪井先生が『まずい設計のものに被害が多い。良い設計の建物はちゃんと問題なくもっている』というニュアンスで文章を寄せられています。
で、『良い構造設計』とは何か?もちろん明確なものはないですが、少なくとも大学の先生がアカデミックに行司的な役割をもって判断する必要があるんだけど、今の大学の体制では全く期待できないなと。

この手の建築雑誌で毎度毎度思うのですが、建物の平面規模と階高ぐらい入れてくれよと思います。壁のおおざっぱなτすら当たれないよ。
スーパー目分量おおざっぱ計算で1次設計時の壁のせん断応力度が0.8(N/mm2)くらい?形を考えるとまぁそこそこの数字なんでないの?