読了めも

奇形建築物世界遺産100

奇形建築物世界遺産100

安定のゲーリー率の高さ。新しいのを編纂するとなると、ザハおばさん率も高くなりそう。
一番のお気に入りはシューホフの塔。
10+1 web site|テンプラスワン・ウェブサイト|建築インフォメーション|モスクワ、シャボロフカ街のシューホフ・ラジオ塔の運命に関するプーチン大統領への公開状
ヘロヘロ鉄骨すぎ。鉄少なすぎ。素晴らしい。

Soviet Bus Stops - Limited edition photo book by Christopher Herwig — Kickstarter
ソ連のバス停シリーズ。どれもこれもかっこいいよね。悲しいかな日本にはソ連コネクションがあるのが、基本的に八束はじめ氏しかいないので、紹介のチャンネルがないのですよ。
9/9追記

ロシアのシューホフ・タワー、取り壊し計画を著名建築家と国民投票が阻止 : ギズモード・ジャパン
保存・補修の方向で決まったようで。ぱちぱち。
鉄不足でこういう形態と高さに決まったソ連
一方の日本は鉄不足でRCの200mの原町無線塔を作りました。この辺の差はどっから生まれたかを実証的に技術史側面から調べると面白いかもね。

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)

昨今の技術革新をベースに、野生動物に発信器を付けて位置情報や加速度情報を蓄積するバイオロギングなる学問領域。基本的に物理法則は何人たりとも破れないので、惑星の運行とペンギンの運動は同じベースで語られるべきものなのです。
大体、野生動物が実際はどんな動きをしているかなんて近年になっても分かっていないどころの騒ぎではないのです。あれだけバクバク食べてた鰻ですら産卵箇所を特定したのはつい最近の話ですし。
カメラが十分小型化されて、バッテリーもいいのがあるので、動物園の海獣ゾーンなんかはカメラ背負わせて液晶モニタに出力するとかの試みも面白いかもよ。
皆殺し映画通信

皆殺し映画通信

観るな危険の地雷の邦画映画をノコノコ見に行って、散々にこき下ろすさまは流石お金もらっているプロ評論家です。さながら巡礼者のようでもある。
基本的に私はハリウッド超大作バカ映画しか見ないんで、邦画なんていったい誰が観るんだよと思っているクチです。がしかし。動員ランキングは必ず感動系邦画がトップなんだよなぁ。『キャシャーン』見に行って映画館で熟睡して以降、邦画は見に行かない系になっちゃいました。あれは若さゆえの過ちというやつです。
天体衝突 (ブルーバックス)

天体衝突 (ブルーバックス)

長い地球史を考えると、結構な頻度で惑星は衝突してます。有名なのは6500万年前の隕石衝突ですが、これが学会でそれなりにオーサライズされたのは結構最近なんですね。
最後に古文書や伝説に出てくる龍と隕石衝突との関連性が述べられているのが興味深い。確かに隕石衝突は非常にダイナミックな現象であり、後年まで残りやすい伝承であると思われます。ラーマーヤナは古代核戦争だというのが有名ですが、案外空からの襲来だったのかもよ?
私はもう学校教育から離れて久しいのですが、『江戸しぐさ』なるトンデモが学校の道徳教育の分野まで浸食している模様です。私はトンデモ経由で知ったので、そういうもんだとわかっていましたが、意外に書店にも本が出てるのね。

扇子やハンカチ、どう使う? 夏の汗かきマナー :日本経済新聞

だが、使い方次第では自分の印象をよくすることも可能だ。たとえば江戸しぐさを意識してみよう。扇子やうちわは顔の真下の首のあたりでゆっくり静かにあおぐのが粋とされる。いずれも風が周囲に当たらないようにする配慮といえる。

と、一応クオリティペーパーである日経新聞にまで食い込んでいるのでそれなりの市民権を得ている模様です。
これが、どう考えても真っ赤なウソであることはちょっと調べればわかるんだけど、インチキNPOだけでなく教育行政まで食い込んでいることが一番の問題なのです。基本的に、老人や自称良識ある人間の愚痴『昔はよかったけど、現代人は何とかかんとか』にすぎないのに、なぜか感染力が高いのです。
先日取り上げた地名の話と、江戸しぐさの拡散具合はおそらく似たようなものでしょう。この手の簡単に導入できる説教話は、日ごろ眠っている善意とやらをたたき起こして動かすのに十分な力を持っているのです。
蛇落地悪谷が広がるスキームは、
①地名には災害の意味が込められている
②それを勝手に変えた行政と開発行政はけしからん
③良く調べずにすんでいる住民もけしからん
④土砂撤去に100億もかけるのは先人の警告を無視した愚かな人たちの救済にすぎずけしからん
と、江戸しぐさをもって現代人を説教しようとしている輩と全く同じ構造なのです。奇しくも本書の発売日と重なるように、新たな説法が生まれるというのはなんということか。
あとは、江戸しぐさが結局は権力にすり寄って道徳教育にねじ込むのを傍観していた歴史系の学者の敗北でもあるよね。この手のデマを叩き潰しても、個人の業績には何の影響もないので仕方がないとはいえ、学会と銘打っているからには彼らにも頑張ってもらわなければなりません。これは建築学会も同じ。怪しげなマンションのうたい文句や週刊誌の変な煽りなんかをちゃんと分析して、学問的に論破しないと変な常識が世間を惑わすことになります。常々言っている『超高層には杭が必須』なんか、明らかに構造系の先生の怠慢により引き起こされた妄想だと思います。あとは、雑壁の損傷とかも。
もう一つの問題は、そういう世間の妄想に迎合することで専門職として生き延びている変な方々が増えてきたというのもあるけど。
オカルト案件として江戸しぐさを批判した本は何もなかったので、出版されたこと自体に意味があるかな。

嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

小保方氏の件で最大の失敗は、、理研のガバナンスではなく広報戦略だったと思います。あれは下手をうったし、とんでもないモンスターを内に抱えちゃったものです。
小保方氏が最初に出てきたとき、CiNiiで2件しか論文が引っかからなかったので変だと思いました。私ですら5編くらいはあるんですよ。その時は、バイオ系との文化の差かなと流したんだけど。
院生の頃から、『バイオなら予算が取れる』というのは通説でした。東大の生産技術研究所は主に工学系がメインだったんだけど、右も左もバイオに関連付けて予算取ろうとしてましたね。
日本の学会一覧 - Wikipedia
バイオ系がどの学会に所属するのかはよく知りませんが、どれもこれも規模が小さいのです。建築学会なんて、ガラパゴス中のガラパゴスみたいなもんだけど、人数が多いだけあって変な論文もたくさんあるけど、そういう変なのが一世を風靡することはまず無いのです。これ、経済学会も同じなんだろうけど、規模が小さすぎて日本国内でちゃんと議論する土壌ができてないんじゃないかなぁ。海外で活躍もいいんだけど、あまりに国内体制が貧弱だからそうなっちゃうわけで。まぁ、今更国内のベースをちゃんとしますとか言ったところで、大反対のオンパレードなんだろうけどさ。
今回の件は、業界の中からちゃんと声が上がって不正だと言われたわけで、実は健全な科学のプロセスを踏んでいると思います。むしろ周囲がこんなにわけのわからない騒ぎ方をする方が変だと思うのでした。