技術について思うこと

技術流出と日本の伝承文化
このコラムからちょいちょい引用しつつ。基本的に、日本語で『技術』というときには『Technology』と『Skill』の棲み分けがちゃんとしていませんね。新聞なんかの論調では、『Technology』の意味の気がしますが、コラムにあるような『技術流出』という場合は『Skill』というニュアンスが強い気がします。その場合は『技能』という日本語になりますが、切っても切れない関係にありますね。以下、私は『Skill』というニュアンスでいきます。

筆者は、説明を分りやすくするために、「技術」というものを三つの分類に分ける。もちろんこれは筆者が勝手に決めたもので、決して世間で認知されたものではない。一番最上級の「技術」は、メーカにとって最も重要で生命線となるもので、他社との競争を考えると絶対に外に流出させてはならないものである。ただしこの種の「技術」であっても必ずしも特許をとっているとは限らない。これをAの「技術」とする。

日本の企業では、末端の従業員が中心に身近な職場改善運動が活発に行われている。これも一種の技術開発に繋がることがある。具体的にはQC活動やカイゼン活動などから生まれるような技術である。QC活動は、元々米国生まれであるが、日本で最も花が開いた。今日、QCはTQCやTQMに発展している。これらが米国ではトップダウンで行われたのに対して、日本ではボトムアップで実施されたところに特徴がある。このような「技術」をCとする。

そしてこのAとCの中間に存在する「技術」をBとする。研究所で研究されているような最先端で高度なAの技術ほどではないが、それを製品化するために必要な様々な技術もBの一つである。またCのような職場の改善運動ではなかなか生まれることが難しく、もっと高度な工学の理論や知識の裏付けを必要とするような技術もBということになる。Bの技術は幅が広い。例えば最適な生産のための工程の改善に関わる技術なんかもこれに含まれる。またもし空カンを使って燃料費が10%程度削減できるようなことがあるなら、このような技術もBの技術と言える。

私は、有名大学→有名企業→零細事務所の順の転落人生なので、一応A〜Cの技術についてはすべて触れたことがあります。マスコミをにぎわす『技術』は暗にAのことを言っている気がしますが、Aだけでは製品ができたとしても、その先の運用やメンテなどの気が遠くなるほどの業務に関しては到底足りません。ぶっちゃけ、BとC、あるいはCに特化していたとしてもA単独の技術に負けることはないと思います。
私は大手企業にいたので、皆さんAの技術について詳しいのだろうと誤解されている向きがありますが、大手と中小の違いはB,Cの層の分厚さだと思います。ぶっちゃけ、Aの技術は金で買えるので代替可能ですが、B,Cは一子相伝の秘伝みたいな世界なので、金で買えません。人数と体制をそろえていくしか整備の方法がないのです。マニュアル化も困難でしょう。Cの技術はぶっちゃけ現場の勘です。Bは、それに対して工学的な裏づけを入れ込んでちょっと進めたものといったところでしょうか。
逆に言うと、Aの技術は一発ネタみたいなもので、ネタがばれたら終了です。今のインテリさんは、Aの技術がないから日本が負けていると思っているようですが、私に言わせれば大間違いです。くだらないAにかまけてBとCを切っているからだめなのです。Aの技術は中途採用でまかなえても、BとCについてはなかなか難しいのではないでしょうか。私はゼネコンにいましたが、Aの技術を求めている人も多かったですね〜。むしろ、大企業こそがBとCを極めるべきで、それこそが大企業たる王者のゆえんだと思います。
ま、この中で私が一番得意とするのはBの技術ですね。残念ながらこのテリトリーの技術は花がないので、自分と同程度のレベルの人にしかわかってもらえない弱点があるので、広告には向いてませんな。
個人的な意見としては、大企業とその他を分けるのは、BとCの技術であってAではないということです。ぶっちゃけて言えば、筋トレに始まる基礎体力の差ですかね。『普通にちゃんとやれるかどうか?』が大企業とその他の大きな差でしょうね。普通にちゃんとやるのが一番難しいわ。
ということを分かってもらうためには、若い人にどう説明したらいいかが今後の課題ですな。


技術亡国論 その2「東京スカイツリーの無意味な高さ」 --- 古舘 真
アホの巣窟のアゴラから引用するのは癪ですが。。。。。
このコラムの筆者は、技術とはAしかないというドグマにはまってますね。
一部の業界では有名人ですが、君ホントにゼネコンで勤務してたの??所詮知識人の語る技術なんてものは、その程度の認識なのです。
と、誰か怒れよw


地上114mに免震層を配置した「三田ベルジュビル」竣工
先日の日経アーキに取り上げられてましたね。これが、日建の設計で施工が竹中ならば、『わがままな日建の設計で大変だったね〜』で終わりなのですが、設計施工でこの出来というのが気に入りません。こんな馬鹿げた設計をしてれば、赤字になるのは当たり前です。東京は優しいなぁ。これ、大阪だったら会議で10秒も持たずに粉砕される気がします。説明して説得する自信なしw
そもそも、雑誌の特集では上部のRC部分がTMD的に効くというニュアンスで書いてありましたが、ホンマかいな。TMDで1次モードを最大に小さくするのは有効質量比で5%とかそんなモンだった気がするので、このRC部分のマスはでかすぎだと思います。そこんとこ、ちゃんと説明してもらわないとね〜。
ついでに、鉄骨部分の変形を少しでも抑えて免震層に入力する波を短周期化するために、ハットトラスをかけるとか、工夫はないんかいな?これじゃ、ただラーメンに乗っけました、応答解析してOKでしたではあまりに芸がなさ過ぎる。はっきり言って、これが気に入らないのは考えた形跡がないことです。まさかとは思いますが、こんな程度で技術を売りにしてほしくないものです。あとね、好みの問題ですが『かっこよくない』です。プロポーションも良くないし、ファサードださいし。
思ったんだけど、この物件を大阪でプレゼンテーションしたら、『俺にも石使わせろー!』『もっと鉄を。。。』と野次が飛ぶこと請合いますな。