読了めも

エアフレーム―機体〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

エアフレーム―機体〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)


航空機事故よりも、マスコミのあり方を風刺しているのが好印象。
自分で建物の構造設計なんかをやっている身からすると、この世の中にまったく技術的なことがわかってもらえないジレンマがよくわかる。


Q.この建物は地震で大丈夫なのかどうなのか?
A.基準法に則って設計しているため、50年に1度の中地震(震度5弱)では壁や梁にひび割れが入ることはありますが、大きな損傷は受けません。500年に1度起きる地震(震度6強)では、床が落ちたり柱が折れたりして倒壊することはありませんが、躯体の損傷は免れません。


Q.50年に1度とか500年に1度とか計算上のもので実際どうなの?所詮計算なんでしょ?
A.地震の再現期間は過去の蓄積されたデータに基づき確率論的に求められるもので、明日大地震が起こってもおかしくはありません。そのためにも上記基準法に則って設計しているのです。


Q.で、結局壊れるの?壊れないの?
A.ですから、上で申しました通り・・・・・(以下ループ)


基本的なマスコミのスタンスは、責任者を探し出して血祭りにあげることとしか見えないので、このあたりをどう付き合うかは企業の問題ですね。あまりにマスコミに気を使うと、企業の生産はすべてストップせざるを得ませんし。
という議論になると、必ず保険必要論が出てきますが、これまた上と同じく責任の所在をはっきりさせるところに行き着いて企業活動の停止につながる。


昨今流行のコンプライアンスとやらも含めて、もう少し社会的に成熟した議論を行える技術者としての土壌作りができないかなと思います。