思考停止の長周期地震動

南海トラフ巨大地震 超高層ビルの対策を

コンピューター上に柱と「はり」などの構造を再現して解析した結果、地震発生から３分余りで最上階のビルの揺れ幅は最大２メートル８８センチに達しました。
このビルでは、揺れ幅がおととしの巨大地震の際の５倍近くに、揺れの継続時間は２０分以上になるおそれがあり、柱と「はり」の接合部が想定を超えてゆがみ、壁や天井などが崩れるなどの被害が想定されるということです。

多分、このニュースを聞いた人は振幅3mという大きな数値を聞いて、そこで思考ストップしてしまいます。何せ3mも振られるのだから無事なわけはないです。という直感は正しいです。
でも、解析対象のビルが150mクラスなので、これが片振幅とすると変形角で1/100程度です。あれ？そこそこ常識的な変形角です。多分、このくらいの変形角になってくると部材の塑性率が2を超えてくるので、躯体にダメージを受けますが倒壊することはありません。久田先生がおっしゃっているように、家具を固定するとか、さっさと机の下にもぐるというのが最も正しい防災対策です。
こうやって、身近な恐ろしげな数値で脅すのはやめていただきたい。はっきり言って、超高層なんて関係あるのは極めて限られたごく一部の人です。問題は、そこらへんにある旧耐震の役所とか、個人住宅でしょう。費用対効果からすると、普通の建物に筋交い1個足した方が、補助金事業としてはマシでしょうに。なんで、こうやって煽るかねぇ。
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長周期地震動の問題とか言われていますが、いろいろな問題がごっちゃになっているのでややこしいです。いくつかに分類すると、

①震源で発生する地震波のうち、表面波は減衰の影響を受けないので、震源が遠いにも関わらず建物を揺らしてしまう(新潟中越地震の六本木ヒルズなど)
②震源で発生する地震が地下構造により長周期化されて、建物を揺らしてしまう
③そもそもの地震継続時間がべらぼうに長く設定されるため、揺れがおさまらない

くらいですかね。
①が本当の意味での長周期地震だと思いますが、先般の東日本大震災では顕著に出ませんでした。海溝型の巨大地震では、長周期地震動がたっぷり出て、減衰の影響を受けないから要注意であるというのが、これまでの学会のスタンスだったかと思います。で、東日本大震災後には、皆さん口をつぐんでおられるようですが、どうなったのかな？遠くの建物を揺らすような波が出るのは確かですが、建物を倒すほどのエネルギはないと考えるのが妥当ではないでしょうか？
②については、杭基礎の超高層が問題になります。というか、昔の超高層は基本的に直接基礎なので、地盤の増幅をそんなに受けません。むしろ、90年代にズブズブの地盤に杭を打って建てたやつがまずいでしょう。だけど、そんなことは前から考慮していたので、何をいまさら長周期？という気がしてなりません。
③については、そもそも継続時間が長くなっているので、現行の建物でその分のエネルギを吸収しようというのが無理があります。こいつを抑え込むためにダンパを増設するのは工学的に意味があります。
と、私なんかは思うわけですが、煽られた皆さんは無関係に超高層は危険だと思い込むでしょう。放射脳と同じノリですね。構造の先生、頑張って火消してくださいね。
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建築技術 2013年 05月号 [雑誌]

建物は地震で倒れるとよく言われますが、間違いです。倒れるのは自重によってです。と、私が言うと頭のおかしい人が呻いているといわれるだけなので、毎度困ります。
ここは、竹中工務店の偉い人が寄稿している文章を読んでもらいましょう。ポテンシャルエネルギを議論のベースにして、建物を転倒させようとする地震力はポテンシャルエネルギとはオーダ違いであることを示しています。まぁ、極めてまっとうなご意見で、私もそう思います。ついでに、熱力学の第2法則についても考察してあるのがグッド。
私は常々、『構造設計はフックの法則とニュートンの第2法則と熱力学の第2法則』を知っていれば問題ないと言っているのですが、その妥当性が証明されました。
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近所に直接基礎の高層ビルがあるのですが、高層ビルで直接基礎だと地震の時にコテッと建物自体が倒れたりしませんか？？
このブログを閲覧している方にはこれだけは覚えていただきたいです。正しい超高層の基礎は直接基礎で、杭基礎なんて邪道です。タワーマンションの広告では、皆さん杭を売りにしていますが、杭を打たなければならない土地に超高層を作る発想は大間違いです。
霞が関ビルもランドマークタワーも都庁も直接基礎です。
そこらの構造屋でも、引き抜き対応で杭とか妄言を吐いていますが、『お前！引き抜きのかかった杭の設計のしんどさ知らんやろ！！』と言いたくもなります。東京だと、そういう設計がザラですね。普通の40mクラスの場所打ち杭で、鉄筋が2重になってたり。酷い設計が多いです。