コンクリート船のこと

ここのところ、ちょっと第2次世界大戦中に製作されたコンクリート船のことを調べていました。とはいっても、ある程度の古本や記事でたどれる程度のことで、国会図書館などに行くなどの調査ではないです。飲み屋でのヨタ話程度に。
太平洋戦争中のコンクリート船は、3系統確認されています。海軍・関東軍(陸軍)・運輸省の三つです。
まずは海軍のコンクリート船は有名な武智丸です。これは至る所で触れられているので割愛。
廃墟化したコンクリート船「武智丸」を見に行く - デイリーポータルZ:@nifty
次に運輸省のコンクリート船。これは第一国策丸というあんまりな名前で知られています。建築関係者では有名なタケイ式コンクリートが使われています。まぁ、防水必要だよね。
http://www.takeibousui.com/category/1273242.html#kokusakumaru
今でも躯体防水を使うことはあるので、大昔のコンクリート船の技術そのままに現行建築物に生きているなんて胸熱。
最後に陸軍のコンクリート船。これが、ソ連満州侵攻に伴ってすべての資料が廃棄されたようで関係者の証言しかありません。数少ない中で拾い出すと、特に建築設計関係者には興味深い名前がボロボロ出てきます。そもそも、関東軍のコンクリート船の企画自体が遊んでる建築屋に船を造らせようという企画であることから、戦後活躍する方々が入っているのです。
研究依頼は関東軍から大陸科学院の小野薫先生に行っています。話を持っていったのが京大の横尾義貫と馬場知己氏。馬場氏の名前は聞いたことがなかったのですが、戦後は国鉄の幹部で国鉄川崎火力発電所の設計で建築学会作品賞を取っていますね。
実施設計・施工にあたり、凌水屯部隊という造船中隊が組織され、在満召集兵100+満州国勤報青年隊300の編成となっています。隊長は小山技術中尉、副隊長に足立、梶山両少尉が任命され、いずれも建築家とのこと。
隊員の中から、計画が増田友也、施工が渡辺、溶接が池田、構造が加藤渉、材料が増田文雄となっています。増田友也氏の戦後の活躍は言うまでもなく。加藤渉氏も。その他の方々のお名前は分かりませんが、戦争を生き延びた方はひとかどの人物になっているかと思われます。
この造船中隊で施工した船は、試作船500t×1と改D25型輸送船5000t×2の模様です。改D25型輸送船の図面が残っていないので、関係者の記憶によるところが大きいものの、船長130m程度、船幅約20m、高さ9mの喫水5m。厚みが15cmで、重量は2000t程度だったとのこと。この辺の大きさの話は証言者によって数字がぶれますが、少なくとも武智丸の倍近い大きさがあり、当時でも世界最大級のコンクリート船だったようです。試作船の方は小野薫氏設計とのこと。
改D25型輸送船のうち1隻は進水ののち、引き潮に取り残されて破壊されたようです。残る1隻はソ連にとられちゃって消息不明。
試験船に関しては、これも無事進水するも日本へ持っていくときに嵐にあって沈没しています。
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福島三七治著 港湾特論よりコンクリート船の進水の様子。
貴重な記録なんだけど、私らの知っている進水の様子と違いますwどう見ても沈没しているように見えますが、正式な手順らしいです。
終戦間近だったこともあり、結局何の活躍もしなかったコンクリート船ですが、それなりの技術蓄積がなされています。前に鶴見倉庫で40mのシェルをいきなりかけるのはデカすぎるし、度胸があり過ぎると書きましたが、ここで5000tの船を浮かせればそれを反対にするだけなので屋根に転用できますわね。愛媛県民会館とかの一連の丹下+坪井の作品群もこれらの経験が生きていると断言しても良いと思います。なんせ坪井先生の師匠筋が小野薫先生であることだし。
参考文献
港湾特論 福島三七治著 1951
建築への誘い 近江栄著 1981
渉 加藤渉先生古稀記念出版界 1985
国際建築 1951.7
CiNii 論文 -  日本で最初の鉄筋コンクリート船
CiNii 論文 -  加藤渉会長と語る
ティモシェンコたんは同時期に100隻のコンクリート船か・・・・。エンジニアは考えることが同じだね。
CiNii 論文 -  鐵筋コンクリート船の一設計
サイズから言って多分武智丸の設計
CiNii 論文 -  2324 鉄筋コンクリート貨物船「武智丸」に関する調査報告(既存構造物の調査)
武智丸の調査報告書。塩化物量がアホみたいに多いのに中性化があまり進んでいなかったりで。緻密なコンクリート組織を作れば長持ちするもんだね。
CiNii 論文 -  馬場 知己先生を憶う
馬場氏も京大閥か。
CiNii 論文 -  幻の鉄筋コンクリ-ト船 (見たり・聞いたり・困つたり<特集>)
この記事は探せませんでした。誰かゲットしたら教えてください。
これだけバリバリに建築関係者が絡んでいて、構造工学的にも興味深いコンクリート船なのに「建築学の概観 1941-1945」には触れられてないんだなぁ。

素人調査ではここまでかな。これ以上調べる可能性があるのは、川南造船の歴史関係資料、日大近江研か斉藤研の資料庫、京大の上谷研究室の資料庫、あとは生研の藤森研の地下資料庫あたりか。

ここで中国のコンクリート船です。
【写真】まるで廃虚、畑の真ん中に横たわる「世界最大のコンクリート船」=撤去をめぐり議論―中国 : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)
陸軍の改D25型輸送船はこれよりちょい小さいくらいなので、当時いかに馬鹿でかかったかがよく分かります。
この手の大きくなる速度は大体倍々ゲームなんだけど、いきなり10倍サイズは勢いがあり過ぎである。



 

今も昔も

建築学体系18 鉄骨鉄筋コンクリート構造(S38)序文より

(前略)
まず剛比の仮定・・・・。これは応力解析の最初に設計の最後の結果を要求するわけで、あまり経験のないものや、経験を積んだ技術者でも、何千本の部材をどうして最初から決めることができようか。途方に暮れた彼らは、先輩のデザイナーの言うようにまず断面寸法を決めるであろう。この位でどうだ、デザイナーは柱が小さく、梁などはむしろない方が良いのだから、彼らと相談して決めた部材で応力を出したとしたら、とんでもない断面が出来上がる。例えば55*55cmの柱に対して8-L、鉄筋は36-D28というような断面ができてしまう。鋼材が多すぎると文句を言われ、計算やり直しということになる。哀れにも彼らは再び、はじめからやり直さねばならない。かくのごとくにして、彼らは架空のラーメン計算に全エネルギを搾り取られてしまう。
したがって、鉄骨鉄筋コンクリート構造で最も重要であるところの部材断面の設計、柱・梁接合部の問題、基礎設計の問題などに対しては、極めてわずかの時間しか残っていない。それに設計変更は随時おこる。剛比を仮定して、やっと分布係数が決まったところに変更とくる。仕方がない計算書のつじつまを合わせるのに精いっぱいというのが実状ではないだろうか。もちろん数学の神様のような人もいるだろうが、そのような人は、土建屋と軽視されるこの世界にはあまり入ってこない。建築界にはむしろ数学に弱い人が集まってくる傾向が強い(もちろん例外もある)。したがって要領の良い人はともかく真面目で気が小さい彼らは、膨大なる計算を抱えて、毎日青い顔をしながらラーメン計算を行っている。最近はたてものの事故が多く、建設会社、設計事務所には賞罰規定すらできている。いったい罪は誰が受けるのだろうか。構造技術者に決まっているようなものだ。これらについてはいたるところで触れているが、著者は何とかもう少し緩和規定でも出してもらいたいと思っている。(建築構造技術者の連合を作って、スト権を与えてもらいたいとさえ思う。某建築会社で設計部の構造計算の担当者が3代続いて物故者を出した例があるのを見ても、いかに構造計算者が不当に苦しめられているかがわかるであろう)

どこかで聞いたような話である。50年前とかわっとらんがな。メンタル故障経歴の私が言うのもなんですが、某建設会社の構造設計も故障者多数でした。絶対に全部理解できない膨大な構造関係の専門書を満たしていないとNGなんて世の中ですから、さっさと馬鹿になって「分かりません」と言いたいものです。
書いてあることは真っ当すぎて泣けてきます。正義の味方のちょうちん持ちにすぎないJSCAの老人の方々の目ん玉ひんむいて読ませたいものである。


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うわ。写真ボケボケ。1965年くらい。
坂倉設計事務所の新赤坂ビル。なんか貧相ですね。
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構造はレーモンド事務所出身の岡本剛氏。別に5m跳ねだそうが何でもいいけど、9階建てでSRCじゃないんですね。規模が小さいからどうにでもなるけど、偏心コア気味で耐震診断したらNGだろうなぁ。
この手の建物の偏心率の考え方で、重心を計算する際に軸力分布による方法と、平面的な質量分布による方法がありますが、どっちを採用するか迷いますね。高さが20m以下ならどうでもいいかと思うのですが、ちょっと背が高いのでもうちょいマシな形にしないとまずそうです。あと、壁のスタンスが全然ないから転倒モーメントの処理が力技になるよね。寸法が何もないので分かりませんが、圧縮側の断面積が心もとない。
現在の建築基準法の中でもこの架構は実現可能でしょう。普通にルート3やればいいわけです。Fesの割増かけて、コンクリート強度を上げて柱筋は高強度の芯鉄筋をドカスカ入れたらどうにでもなるでしょう。HPシェル状の跳ねだしスラブもどうにでもできます。Ds0.4前提さ。
で、それが良い構造設計かと言われればそういうわけではなく。別に現行法規に照らさなくても、当時の基準から言ってもこの設計は決して良い設計ではないと思います。JSCAに代表される構造設計職能団体であれこれ提言していますが、あくまで構造の新奇性に特化しているため、世の中的に『良い構造設計をする』というインセンティブが一切ないのです。
十勝沖地震報告書(新耐震前)なんかだと、坪井先生が『まずい設計のものに被害が多い。良い設計の建物はちゃんと問題なくもっている』というニュアンスで文章を寄せられています。
で、『良い構造設計』とは何か?もちろん明確なものはないですが、少なくとも大学の先生がアカデミックに行司的な役割をもって判断する必要があるんだけど、今の大学の体制では全く期待できないなと。

この手の建築雑誌で毎度毎度思うのですが、建物の平面規模と階高ぐらい入れてくれよと思います。壁のおおざっぱなτすら当たれないよ。
スーパー目分量おおざっぱ計算で1次設計時の壁のせん断応力度が0.8(N/mm2)くらい?形を考えるとまぁそこそこの数字なんでないの?

読了めも

オペラ座のお仕事――世界最高の舞台をつくる

オペラ座のお仕事――世界最高の舞台をつくる

こうして見ると指揮者も建築家も問われる資質は変わらんね。基本指揮棒振る人間がヘボだと、演奏者から譜面台投げつけられるのも。
指揮者漫画でのだめに並ぶ傑作と勝手に思っている天にひびきが終わってしまってのう。慎太郎爺さんが引退するかはともかくとして。
人間的にも政治家的にも非常にアレな人なんだけど、実は芥川賞を国民に周知した偉大な文学者なのです。文学者としての慎太郎はこれまで語られてこなかったわけですが、本書で豊崎社長によってばっさばっさと滅多切り・・・・・・・されてないのです。かなり褒めています。
惜しむらくは、本書を読んで慎太郎の小説を読もうと本屋に行っても多くが絶版です。アイガー北壁とか面白そうだけどなぁ。
見えない世界戦争: 「サイバー戦」最新報告 (新潮新書)

見えない世界戦争: 「サイバー戦」最新報告 (新潮新書)

スノーデン事件がしょぼすぎてNSA大丈夫かよと思ったクチです。シギントがいくらすごかろうがスノーデンを抹殺できないわけですから、そんなもん意味あんのかと。やっぱ情報はベッドの上で聞くヒューミントがすたれないんじゃないかなぁ。絶対真似できないし。
ひまつぶしの殺人 (光文社文庫)

ひまつぶしの殺人 (光文社文庫)

早川一家シリーズを贔屓にしているんだけど、多筆の赤川次郎にしては3冊しかないというのが寂しい。小中学生の時は気にならなかったけど、驚くべきスピードで登場人物が展開します。今どきのラノベも真っ青な文体。
PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

サイコパスの世界観はアニメではシビュラシステムのみが語られ、社会風俗については一切触れられない箱庭的世界観です。本書による外伝は、その外側を描くもの。
チェ・グソン編は誰が読んでも『鬼哭街』まんまやんけと思ったけど、作者本人が認めてましたw
思いのほか良作。この作者も3分冊で出てるの積んでるけど読むか。最近早川は分冊攻撃してくるから、いつ読むか悩む。
エンバンメイズ(1) (アフタヌーンKC)

エンバンメイズ(1) (アフタヌーンKC)

ダーツ戦術。続くのか??
欲情の文法 (星海社新書)

欲情の文法 (星海社新書)

官能作家による官能小説指南。年間30冊をコンスタントに出版するってものすごいペースです。
書くことを続けるために30年以上何で抜いたか日記を毎日つけているそうですが、その情熱だけで普通じゃないわ。
ご本人も自分の小説はマンネリであるとおっしゃっているので、永遠のエロは読まなくてもいいかなぁ。大体話は分かったw
サイタ×サイタ (講談社ノベルス)

サイタ×サイタ (講談社ノベルス)

このシリーズはクスリとするシーンが一つでもあればいいやと思っています。

「私、最初っからだいたいつっけんどんだから、ツンドコなんですよ。」
「ツンドコ?何それ」
「ツンとしたまま。どこまでもっていう意味です。お高くとまったままっていう」
「へえ・・・・。あそう。」

爆弾が爆発しようが人が死のうがどうでもいいと思えるミステリも珍しいな。

権力の館を歩く

権力の館を歩く

建築家は政治が嫌いなので、この手の話には乗らないけどなかなか面白かった。最近の大御所建築家で政治家関連の建物って誰か設計してるんかね。

ゼネラル物産室内テニスコート@キング設計事務所

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http://ninetailsfox63.hatenablog.com/entry/2014/09/26/002327
先日もちょっと取り上げましたが追加。こうしてみると、モスラの幼虫だな。
このシェル、杭をななめに打つことでスラストに抵抗しているけど無茶するなぁ。今だったら間違いなくそこそこごつい基礎梁を入れることで対処するけど、ちょっと足元が頼りない。新潟地震などで、この手の頼りないシェル架構の被害が多かったことが報告されているので、淘汰されたということでしょう。でも、桁行方向に水平力受ける用の棟みたいなのが入っているのは偉いなぁ。短期は無視じゃないんだ。
昔のこの手の設計を見ていると、可能な限り不静定次数を下げて静定構造物に近づけようとしています。コメントでもその手の話がちらほらしているので、構造屋の中ではコンセンサスがあったのでしょう。確かに不静定次数が高い建物は手計算では絶対に解けません。よって、構造計画の際に静定構造物に近づけようとする努力は分かるのです。ただ、終局変形を考えると不静定次数が高いことによる応力再配分を期待しておいた方が昨今の設計事情には乗るでしょう。やっぱり計算機によって多元連立方程式が高速で解けるというのは、構造設計に大きな影響を及ぼしています。
この建物のように基礎梁なしのピン接合でいこうとするなら、松杭+フーチングの終局支持力を算出して地盤ばね考慮の解析になるのでしょうがめんどくせえな。
誰もこの建物は知らないと思うのですが、取り上げられているのが竹山謙三郎著『物語 日本建築構造百年史』と新建築1980年7月増刊号の布野修司のコラージュしか確認できません。

さて、設計のキング設計事務所。いくら探しても正体が分かりませんが、昔の雑誌の求人広告だけ見つけました。
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GHQがらみだったりするんでしょうかね。
アメリカ人建築家で調べてもあまり出てこないながら、それなりに国内で作品を残しています。この辺のところは鹿児島の木方研究室でOBの衛藤中山設計を調べているとかいないとか風のうわさを。
http://niben.jp/orcontents/chusai/detail.php?memberno=6220
プロフィール | 鹿児島市の建築設計事務所・衛藤中山設計/株式会社ナック
OBの方が日大だったりするので、やっぱ小野薫+加藤渉の構造設計なんでしょうね。

圓堂建築設計事務所作品集とか

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S44年の作品集は高くて手が出ないので、お手頃価格のやつを保護。
北日本銀行は、いろいろ調べましたが全く発表した形跡がありません。この作品集の並びにしても、一つだけ突出して村野的な設計なので、ご本人の中では黒歴史なのかもしれません。このころの建築家業界は、民主主義とか市民に開かれた何ちゃらをキャッチフレーズにしていたので、北日本銀行のような豪華な石張り+日本庭園なんて相手にされなかったでしょう。
今でもそうですが、建築家業界は公的な美術館や役所をやらない限り人間扱いされない狭い業界ですので、現代において彼の商業建築や実業家相手のビルものが相手にされないのも分かります。
あと、写真が全部GAの二川さんなのでそれだけで3割増しかっこよく見えるw
村松貞次郎氏と浜口隆一氏の寄稿文がありますが、圓堂政嘉という建築家は人間的に非常にアクのある人物だったようで。多分敵が多かったんだろうなぁ。
今のつるぺた建築とか日建設計にうんざりしている人には良く見えるし、普通の人や建築学科の学生にはさっぱり受けない建物なんでしょう。建物道楽の実業家も絶滅してしまいましたし。

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犬も歩けばなんとやら。
新橋SL広場の古本市に寄ってゲット。市場価格の2割程度でした。
ありがたやありがたや。

古雑誌より。
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これはまだある。
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廃墟クラスタには有名な生駒山のUFO。よー作ったわ。
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絶対に取り壊されていると思いますが、懸垂構造。実現したかも不明。
1960年代の建築雑誌の構造設計事務所でかおる建築研究所というのが頻繁に出てきますが、日大の小野薫先生関係ですよね。小野先生は坪井研の前身で木村俊彦を建築構造の道に引き込んだ方で、シェルに限らずラーメン解析でも大きな功績を残された先生なのですが、設計業界ではある年齢以下ではほとんど知られてません・・・・。

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隣の意匠事務所も都市住宅一気買いしてました。
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難波先生若い。若いよ。。。。。

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槇文彦東京体育館ばかり注目される昨今。建て替え前の東京体育館です。誰も言及せんね。
構造は小野薫+加藤渉。いろいろデザインしすぎて暑苦しい感があるのか、当時の新建築でボロクソに酷評されてますね。施工時は論文にて発表されているので詳細はそちらで。
CiNii 論文 -  東京都営体育館の実施について
加藤渉氏のコンクリート船については、概ね全容が分かったのでそのうちまとめます。
坪井善勝氏の木製シェルを応用した軍と共同開発した飛行機についても調べてますが、さっぱり論文が引っかかりません。生研になさそうなので、航空研究所の紀要とか見たらわかるのかな。

盛岡建築ぶらり

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岩手教育会館
設計:菊竹清訓
竣工:1965年
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7階の眺め。
絶景なんだけど、腰壁がないから落ちそうな恐怖感が使うものの緊張感を生みます。というか、外側にかなりたわんでいるので滅茶苦茶怖かったです。耐震性以前だわ。
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これも、開口部が足元にあると非常に怖い。とにかくこんな小さなスリットなのに足が外に出ていきそうな錯覚を受けるのです。工事現場の足場でも、巾木のついてないやつが非常に不安になって歩きにくいというのと同じです。とにかくこの建物の開口周りは歩きにくい。f:id:ninetailsfox63:20141111154212j:plain
どう見てもアウトなブリッジかかっとるがな。

先日、中の橋から盛岡駅までぶらり歩いたときに、気になった建物群。
「あ、パレスサイドビルのパチモンや」→圓堂政嘉設計
「あ、ファッショな銀行や」→圓堂政嘉設計
「あ、あのタイル壁面高そう」圓堂政嘉設計
「この現地事務所かっこいいわ」→圓堂政嘉設計
「パラペットかわってるなぁ」→圓堂政嘉設計
どんだけあんねん。

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三田商店本社
設計:圓堂建築設計事務所
竣工:1968
パレスサイドビルのパチモンとかいってすいません。だって円筒ついてたんだもん・・・・。
1階の柱の造形が特徴だけど、窓のリズムが独特です。

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大北証券本店
設計:圓堂建築設計事務所
竣工:1962年
窓周りが特徴的なファサード。階段室もかなり良い感じです。
この特徴的な窓周り。他にもいくつか市内でありました。設計事務所が同じか、現地事務所の番頭とかが独立後にやったかは不明ですが、影響力はあります。
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教育会館裏の第2産業ビル。窓の作り方は違うけど造型はいっしょ。
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北日本銀行付近。窓の作り方が同じ。だけどパラペットの処理は違うね。
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北日本銀行前のタクシープール。写真撮れてないけど、正面左側のブースの窓が同じ造型。ストリートビューで確認可能。階段の作り方や塔屋の庇を見るに、何らかの建築家の作品であることは確かと思われます。

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北日本銀行
設計:圓堂建築設計事務所
竣工:1959年
以前通りかかった時は90年代の建物かと思いましたが、築55年です。信じられないことに、香川県庁舎とほぼ同時期の作品になります。この圧倒的な設計が全く現代建築の歴史から無視されているのがさっぱり分かりません。私はそんなに数を見ていないですが、国内名建築としてカウントされるべき名作かと思います。
受付で話をしたところ、軽く中を見せてもらいました。このファサードからは信じがたいですが中庭型のプランで、日本庭園があります。お庭は田中泰阿弥氏が監修という豪華さだそうで。
田中泰阿弥 - Wikipedia
この建物は本当に良い設計です。かなり銀行さんも力を入れて維持保全をしているようで、総務部のおじさんが解説してくれました。ありがたいことです。
竣工当初の周囲との関係を知りたいね。

先日ドカ買いした中古の新建築より、山口銀行本店。1965年竣工です。
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下関市は歴史ある土地で、決して僻地ではないんだけど、突然「ウォール街から出張してきました!」みたいなキレキレ建築がやってきたのね。評論をしているのが村松貞次郎氏で『人を殺す建築』だと評していました。
良く見ると、天井のパネルが大北証券本店と同じ系統だね。こういう造型が好きなんだろうなぁ。
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スラブ筋がどう見ても納まっていないだろうというのはご愛嬌で。スラブ下フカシ入れるだけでいいか。

と、にわかに周囲4人くらいに圓堂政嘉ブームがやってきました。で、よくよく調べると東京にもいくつかありますね。そして、事務所の隣のブロックにあるという・・・・。徒歩5分圏内じゃん。
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偕成社本社ビル
設計:圓堂建築設計事務所
竣工:1968年
ああ、窓のリズムが三田商店本社と同じ。そして謎のパネルが大北証券本店の正負反転タイプ。
他にも七十七銀行東京支店も良さげだけど、去年取り壊しになってるね。あとは、赤坂見附のビルも同じタイプの窓周りでした。
twitterとかで誰か言及してないかな?と思ったら、ほとんどいつものメンバーでしたというオチ付きで。

調査にて

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保存活用計画に当たっての躯体調査で盛岡へ。
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床下に潜ってシュミットハンマーでたたく簡単なお仕事です。匍匐前進って大変だわ。
床下点検口は10m内外で付けないと苦しいことが分かったので、新築の時はよろしく頼む。20mの匍匐前進をクモの巣と戦いながらは苦行以外の何物でもない。夏なら逃げてたね。