NZ地震

まずは、被害にあわれた方にお見舞い申し上げます。

構造物の被害についてのレポート待ちとなりますが、個人的な感想を。

web上で当たれるだけの写真を見る限り、組石造の架構が大きな被害を受けている模様です。どんなレンガや目地なのかは不明ですが、やはりタテ筋がない場合面外の曲げに対して耐力・靭性ともに欠けているようです。これは、構造的な検証をなされていないという点においては想定された被害なのではないかと思います。

語学学校の被害について。
震災前の写真を見る限り、RC造の割りに非常に柱が細く見えます。EVコアや水周りに耐力要素を集めて、外周の柱は長期部材にするという設計手法で、これは海外に限らず日本でも採用されている架構方式です。EVシャフトがそのまま残っていて、パンケーキクラッシュ状態ということは、
・地震時の層間変形が大きく、ねじられるような格好で床が落ちた
・スラブが乾式だったため、面内のせん断力を耐力要素に伝達できなかった
・柱のキャピタル部分が脆性破壊した
の3種が考えられると思います。
被害様相を見るに、EVシャフトがそのまま残っていることから地震時の層間変形はそれほどものもではなく、Pδ効果が顕著に出たとは想定できません。
詳細なレポート待ちですが、2番目ではないかなと思います。
RC建物でスラブによる面内せん断力の移行は、国内の設計でも意外と見落とされやすいポイントですね。

このような地震があると、しょーもないことを言い出す人がいますが、案の定出てきました。
NZ地震の倒壊ビル、「明快に力を分けた構造に弱点」
NZの構造関係の規準がどうなっているかはリサーチしていませんが、よほど水平力を小さくして変形のクライテリアを大きくしない限りPδ効果が中高層建物で卓越することはない、と個人的には考えています。超高層で耐力壁に頼りすぎる設計は致命的になる可能性はありますが、中高層建物までこの理屈を持ち出すのはどうかと感じます。
大体、日本の木造家屋はすべて長期と水平力で明快に構造を分けているので、その時点でアウトだ。

地震波については、下記サイトに速報があります。
http://smo.kenken.go.jp/~kashima/node/69
トリパタイトスペクトルで示されても私ではちょっと分からないので、普通のスペクトル解析待ち。やはり、卓越周期が0.5秒前後にあると中低層建物の固有周期ぴったりなので古めの建物に被害が集中していることに合致します。

NZは耐震工学の先進国だと思っていたのですが、耐震補強など社会的に日本ほど整備されていないのかなと、ちょっと意外な感じがしました。

おまけ。
日本建築学会、地震工学会などはコメントはまだですが、各情報のリンク集は整備されておりしかるべき社会的責任を果たしつつあります。
JASCA、お前はだめだ。この時点においても何のコメントも出さないのは構造技術者集団として失格ではないか。