読了めも

失われた黄金都市 (ハヤカワ文庫NV)

失われた黄金都市 (ハヤカワ文庫NV)


70年代後半に執筆されたもので、万能の科学技術による未開の土地の探索と、人智が大自然には及ばないというテーゼがバランスよくミックスされています。妙に場当たり的な翻訳で、訥々とした印象を受けるのが残念。
「コンゴ」というタイトルで95年に映画化されたようですが、おぼろげに覚えているかも。。。。。白いゴリラの予告編だったかと。


火災の科学―火事のしくみと防ぎ方 (中公新書ラクレ)

火災の科学―火事のしくみと防ぎ方 (中公新書ラクレ)


名古屋大学で、火災やリスクの講義を聴いたのを覚えています。
4年次の講義で必須ではないので、受講していたのは数人でした。
この講義の中で、映画のチャイナシンドロームやタワリングシンフェルノを教えてもらいましたし、火災旋風の貴重な映像も見せてもらいました。そういえば、原発の設計や安全管理も講義項目にありましたね。
ご本人は、昔ながらの変人教授で、ゼミの途中に微分方程式がなくて2時間マラソン行ってみたり、学生とハーフマラソンの賭け競争をして完膚なきまでに叩きのめしたりと、エネルギッシュでした。。。。言っていることはかなりマトモで良心的なのですが。
印象に残っているのは、「学食で飯を食う奴に建築なんぞできるか!今すぐフランス料理店に行ってフルコース食って来い!!」
会社でも「社員寮に入っている人間が心に響く設計なんぞできない」とおっしゃる方もいて、なかなか含蓄のあるお言葉でした。それなりに設計行為をしていると、言われた意味がわかります。まぁ、学生に言うのだから解説をつけないと誤解を招きますが。。。。。
火災について、科学的に設計分野に落とし込める人間は、今の建築業界にはほとんどいないのじゃないかな。耐火設計専門の設計事務所はとてつもなく少ないですし。
今の設計は、基本的に火を出さないことを前提にしていて、延焼後どうなるかについてはほとんど考えられていないのではないかな。今回の原発のお話じゃないですが、設計を超えた極限レベルの性能評価に進んでいかないといけないのかなぁ。


各種構造物の設計とその思想
1987年刊行

建築・橋梁・航空機・原子力機器などの、当時の設計思想のレビュー。
今話題の原発関連をピックアップして読みました。
設計思想としては、『合理的な安全性』を目指してよく考えられています。
この当時のリスクとしては、やはり地震と疲労破壊、応力集中のようで、その面からするとよくできた設計です。
なんだけど、今の世論の感じからすると『合理的な安全性』なんて単語を持ち出せば袋たたきになりそうです。
エンジニアの基本からすると、確立統計論をベースに性能を定める、というのが基本で、その方向性に間違いがあるとは思いません。というか、そうでないと設計ではない。
さんざん、「原発に想定外はない(`・ω・´)」と格好をつけている人たちはなんなんだろうか。。。。ただ、起きてしまったことに対する有事レベルでの対応シナリオは練り直しになりそうですね。


全国各地の原発のバックチェックをやり直すと思うのですが、いったいその人手がどこにあるのだろう。アスペリティの設定からして見直されそうな世論ですが。建築構造の分野で原発といえば、究極のオタク中のオタクがやる分野で、おいそれと人間も確保できないはずなのですが。