建物の耐震性って何さ??

建築の専門家とはいえ、実は構造設計の思想を勉強した人間はほとんどいません。いろいろと専門分化しているため、デザインや施工の人間ではほとんどこの問いに答えられません。
一応、自分の頭を整理するために以下に簡易まとめ。
最近の専門家は当てにならないので、話半分に。


1.木造
もっとも日本で多い建物種別です。
主に2階建てで、最近は3階建てもあります。
2階建ては基本的には、構造計算をしていません。壁量計算というものをしていますが、あんまり理論的な体系ではないです。
構造計算していないとは何事じゃー!と言われそうですが事実です。
それでは、なぜに耐震性能が満足されているかというと、建築基準法の『仕様規定』に縛られているからです。これは、柱の寸法は〜以上にしなさい、スパンは〜以下ね、などと細かく決まっており、これを守ることで耐震性能を事実上の余力として確保しています。まぁ、マニュアル(建築基準法)どおりにやっていればおおむね問題なかろうという判断で、これは過去の地震被害を元に決められています。
3階建ては、許容応力度計算を行っています。これは中規模地震(震度5弱程度)を想定して、構造体に大きな損傷が生じないことを確認しています。またもや、大地震の計算は一切していません。木という材料自体、重量に対する強度が非常に高いため、強度的には余力があるから問題なかろう、という判断です。
というわけで、木造は基本的には大地震時の構造計算をしないのです。
よって、大地震に対する耐震性というのは若干のウソがあります。


2.RC造
マンションやお役所に多いです。
20m以下のものは、これまた中規模地震に対して大きな損傷がないことを確認して、大地震に対する検証はしていません。その代わりに壁量を確保する仕様が義務付けられています。
20m以上のものは、保有耐力計算を行い、大地震に対する検証を行っています。よって、保有耐力比と呼ばれるものが大地震に対する耐震性能としてよく引用されます。アネハ事件のときによく出てきたのがこれです。
60mを超える建物、タワーマンションなんかは、今まで取り上げた建物とは異なり、時刻歴応答解析により建物の健全性を確認しています。これは、建物の部材をモデル化の上で、模擬地震動を入力して応答を見ます。保有耐力比と呼ばれる指標は出てきませんが、模擬地震動を入力したときの性状をつぶさに確認できることから、もっとも精度の高い構造計算をしています。出てくる数値は大量にありますが、建物の耐震性を図るという点では、もっとも信頼性があります。ただし、この手の構想建物で明確に耐震性という指標はないですね。
ということで、背の低い建物は中小地震に対して計算して、大地震に対しては余力で対応する。とても背の高い建物は、大地震を仮定した模擬地震により詳細な検証を行い、建物の健全性を計算している、となります。


3.S造
おおむねRC造と同じです。
細かいところは違いますが、60m越えの考え方は同じです。


と、いったんここまで。
構造設計者は、大地震に備えた計算をしていると思い込まれている方がいますが、規模が大きくならない限り、基本的にはそんなことしてません。
これは職務の放棄ではなく、過去の地震被害を踏まえた上での『合理的な安全性』を確保するための十分な検証行為になっているからです。
これ、世の中ではまったくもって受け入れられない思想ですが、事実なんですよ。。。。。皆さん、構造設計者に過大な期待を持たないでね(ゝω・)v