建物の天井ってどうなっているのさ?

基本的に求められる用件は、
・天井裏の設備関係の目隠しのため
・音響時間を調節するため
・大空間の場合はデザインするため
程度です。安全性を求められるならば、ないほうが良い。
けど、そうもいかんところが建築なのです。
安全性一辺倒ではただのシェルターですが、そんな空間にいたいですか?
少なくとも私はそんな空間は嫌いです。

九段会館だけでない地震による天井落下 首都圏の大型施設で続出していた
九段会館事故で古賀誠会長ら告訴へ=天井崩落、2人死亡−遺族ら
仙台駅や未来館…建物は大丈夫なのに天井なぜ落ちた?
センセーショナルに報道されていますが、天井材なんて設計も管理もちゃんとされていないものなのですから落ちて当然です。技術指針も一応ありますが、あんまりちゃんとしてない上に定量的ではない。
今回の地震でいきなり取り上げられましたが、阪神大震災や中越地震でも体育館の天井が一面に渡って崩落したり、スタジアムの照明が落下したりしています。釧路空港も、コンコース一面に渡って崩落してましたよね。
注目されていないのは、建物の倒壊による死傷のほうが圧倒的にリスクが高かったからです。今回の地震は幸いにも建物に対しては楽でしたので、天井被害がクローズアップされただけで、急に危険になったわけではないです。
今まで、何度か天井材の崩落被害調査に行きましたが、九段会館よりもはるかにひどいレベルで崩落していたにも関わらず、意外とけが人が出ていませんでした。たまたまそのとき人がいなかったという理由で。ですので、研究室で研究していてもあんまり耳を傾けてもらえず、人体耐性指標なんかで危険性を定量的に把握しようと試みてましたが、今回の件でそうも行かなくなったようです。前の会社でも、無防備な天井を見ましたが、誰も言うことに耳を傾けてくれませんでした。地震ではなく、ひとりでに落っこちたりしていたのでそれ以前のお話なんですが。。。。。
建築学会の調査で崩落現場には人が送り込まれており、『なぜ落ちたか?』を説明しようと皆さん躍起になっています。私に言わせると、落ちていないところがたくさんあるのだから『なぜ落ちていないのか?』を説明しない限り、現象について克服できることは無いのです。面白いことに、実大振動実験をしても天井は落ちなかったりします。何か見落としているのでしょうが。。。。
阪神の地震被害も基準法の設計が正しければ更地になっているはずなのに、なぜか結構建物が残っており、構造設計手法がまだまだ現象を捉えていないと感じたものです。鷹取波に耐えられるほど建物は強くないハズ。


お台場の科学未来館も一部崩落しましたが、デザインを変えて復旧予定。
膜材料系のものは仮に落ちても、怪我しません。
建物管理者は良い判断をしています。
http://www.miraikan.jst.go.jp/info/110422166213.html
事故から復旧にかけてをネタにするあたり、いい学芸員です。


天井の件で構造設計者にお鉢が回ってきそうですが、私の意見ではこれは建築家や建物管理者の問題です。懸垂体は地震時にはフラッタリングのような非常に複雑な挙動をして、数値計算で追いかけるのは非常に困難です。
想定地震で倒壊しない建物は設計可能ですが、落ちない天井は爆発的にお金をかけて鉄骨で補強しない限り、地震時のダメージは保障できないでしょう。
今の世論は、それでも安全を!!なのでしょうが、あまりに経済原理に則していない考え方です。よって、未来館のように落ちてもいい材料に変えるのが大人の判断ではないでしょうか。
今のところ、問題はコストです。
膜天井は滅茶苦茶高いので、合理化が行き着くところまで行き着いたシステム天井にかないません。世間の流れでは、膜天井に何か機能(気流制御できますとか)をつければ、多少高くても事業としてペイできそうな気がします。
また、建物管理者も余震のことを考えて建物内に安易に人をとどめておかないことを考えるべきです。今回、余震によって建物が倒壊したり天井材が落ちてきていますし。建物によって地震後にいてもいいものと、さっさと外に逃げた方が良いものは分かれます。管理者は、自分の管理しているものがいずれに当たるのかを事前に建築士に聞いて勉強しておくべきです。応急危険度判定は、ある程度現地が落ち着かないといけるものではないのです。


上記の理屈は、普通のオフィスではないです。
オフィスの場合は、天井が落ちてきても机の下にもぐりこめば身を守れます。大空間で、人がいっぱいいて逃げ場の無い空間で、無防備に天井を張ったり設備を吊ったりしているものについて考えています。
全部の建物について補修することはできませんので、施設の稼働率や建築年代を基にしてスクリーニングし、緊急対応必要なものから考えていってもらいたいものです。


メディアテーク天井。

メディアテークの天井崩落、吊りボルトの破断が判明
普通は野縁のクリップがひん曲がって落ちるのですが、吊りボルトの破断とは初めて見ました。切ろうと思ってもなかなか破断しないもんですけど。どんな物理現象だったのか。。。。